分析手法

 

販売データのいろいろな分析方法

前項までは、販売データを集計・分析するための「道具」について見てきましたが、今度は、「データからどのような情報を読み取り、業務にどう生かそうとしたのか」という視点から各種分析手法を見ていきます。

なお、ここでは手法の「優劣」ではなく、「特徴」のみ述べていますのでご注意ください。  

BIツールによる分析

営業部署には欠かすことのできない、最も基本的な販売データ利用法の一つが「目標管理」です。

そして部署の目標達成が難しそうな場合は、不振のもとになっている要因を見つけ出して解決していかなければなりません。

そのためには部署の合計実績だけではなく、担当者別、顧客別、商品別…とデータをいろいろな切り口から見ながら、不振の要因を追求していくことが必要です。

このようなときに便利なのがBIツールの「キューブ」なのです。

そしてツールについている「見える化」機能を使えば、販売の全体像や推移の変化を的確に読み取ることができ、不振の要因も探しやすくなります。

もちろんこの方法は目標管理のみならず、業績向上や拡売策の検討にも利用されることは言うまでもありません。

そしてこの分析を効果的に進めるには、「何を分析する(知る)ために、どんなキューブを作るか」という点がポイントで、このための知識とツール操作の習得が必要になります。    

 統計分析

販売分析に統計が使われるのは、次の2つの目的によるところが多いようです。

1つは「ある商品の売り上げに影響を与える要因を探し出し、その影響の度合いに応じた施策を検討する」、もう1つは「その商品の今後の売上予測」です。

このほかにも統計には様々な手法がありますが、販売に携わる人の最も関心の高いことはこの2つでしょう。

なお、統計分析を行うためには、要因同士の関連性を調べる「相関分析」や、予測のための「回帰分析」など、統計に関する知識習得が必要になります。

また統計分析は、市場や世の中全体の動向を示すようなデータをもとに分析します。

たとえばマス・マーケットを対象とする通販や小売業では、性別や年齢ごとの、商品に対する関心や好みの傾向を調べるでしょう。

「保険」の業界では、国民の平均寿命や病気にかかる傾向などのデータをもとに保険に関する商品を開発しています。

そしてこのような場合には、全国民のデータを調べなくとも「全体の傾向を把握するにはこれくらいの数のサンプルを抜き出して調べればよい」という統計学の理論に基づいてサンプルが抽出されています。

それに対して、中小規模のマーケットをターゲットにしているビジネスでは、品ぞろえや価格設定、顧客への対応など、売り手側の意思と行動が売上を大きく左右するのが普通です。

このようなビジネスの売上分析は統計分析ではなく、次に掲げる仮説検証法による分析が適しています。  

仮説検証法による分析

今ここに販売データの固まりがあって、「これを分析して報告せよ。目的は全社的に目標達成に苦戦している現状の改善である」と言われたとします。どのように分析しましょうか?

まず行うことは「現状の整理と把握」でしょう。顧客、商品、営業部署ごとに販売実績の推移を集計して、その傾向を調べます。

次に苦戦している顧客や商品、部署などを抜き出します。ここまでは「現状」が分るだけで、そうなっている「理由(要因)」は教えてくれません。 そこでいよいよ「要因探し」です。

これには2つのやり方が考えられます。 1つは、要因探しに必要と思われる情報をできるだけ集めて、その中から見つけ出す方法です。

たとえばデータをいろいろな角度から集計したり、営業からヒアリングしたりして、集まった情報を分析して結論を見出そうとするものです。 これは科学的な分野でもよく使われる手法、たとえば「自然の中のある事象に関する情報をできるだけ集めて、その中から『法則』を導き出そうとする手法」と同じです。

  もう1つの方法は仮説検証法による要因探しです。次の例でその手順を見てみましょう。

今、ある顧客への売上が落ち続けているとします。そこでその顧客の商品別実績推移を調べて、売上が落ちている商品が特定できるのか、商品全体にわたって落ちているのかを判断します。

もし商品が特定できる場合は、その商品は「全社的に売れていないのか、ほかの顧客には売れているのか」も確認しておきます。

そして要因探しです。「そんなのは顧客を訪問して聞いてきたら?」と言われそうですね。 では、顧客を訪問してなぜ売れないのか聞いてみることにしましょう。

ところが実際には、お客の方も明確に理由を言えるケースはあまりないようです。(それ以前に「仕入高が落ちている」という認識もないかもしれません)

こんなとき、あなたが営業だったらどうしますか? 何か思いつく理由を考えて、「こんなことはありませんか?」と聞くのではないですか? 実はこれが仮説検証法の考え方なのです。

データ分析における仮説検証法は、データから抽出された問題点に対して、「こんなことが起きているのではないか」という仮説を立てて、「本当にそうなっているのか」をデータやヒアリング、あるいは実験によって検証しながら、その原因を絞り込んでいく方法なのです。

以上、「要因探し」の2つの方法を挙げましたが、最初の「多くの情報を集めて、その中で真実を探す手法」に比べて、仮説検証法の方が、早く要因にたどり着けるようです。

世にいう「コンサルタント」なる人々は、この仮説検証法を学んでおり、それゆえに専門外の業界であっても、最低限の基本分析をした後は、仮説検証法を駆使して問題点を早く抽出し、解決策を提案できるのです。

なお、先に掲げたBIツールは、実はこの仮説検証法による分析を支援するツールであるといわれています。  

データマイニング

「マイニング」とは「鉱山の採掘」という意味で、データマイニングは「宝の山」といわれる販売データから「宝を掘り出す」ということで生まれた用語です。

データマイニングはBIツールが普及し始めたころから盛んに言われるようになりました。 この分析の仕組みは、いわばPCの「力仕事」と言っていいでしょう。

販売データ上のあらゆる商品を組み合わせて、その「売れ方」に関連性がないかを調べたのです。

その結果、「週末に紙おむつを買う男性客は一緒にビールも買うことが多い」という伝説(?) が生まれたりもしました。 「パンとバター」、「ビールとつまみ」の組み合わせならだれでも思いつくでしょうが、「おむつとビール」の組み合わせはちょっと思いつかないでしょう。

そのためデータマイニングは、「隠れた法則(販売上のヒント)」を見つける手段としてもてはやされた時期がありました。 しかしながら、データマイニングは統計分析の範疇に入ります。

それを使いこなすためには分析に適したデータであるかを確認し、何を分析するのかをきちんと意識して進めなくてはなりません。

つまり「利用するためには統計の知識が必要」なテーマだったのです。 そのため、成功事例もあまり報告されないうちにブームは静まり、現在はビッグデータを対象に、「データサイエンティスト」という専門家によって活用が進みつつあります。  

ビッグデータの活用

ビッグデータはビジネスの世界にさまざまなサービスを生み出していますが、そのデータの利用の形は大きく2つに分類することができます。

1つは従来のように「統計的手法を中心にして」いますが、より深い分析を行うことによって、市場全体に対して新しい商品やサービスを企画し、提供していく流れ。

これには「広いエリアの自販機の一元管理」、「医薬品と安全性の研究」などがあります。

もう1つは、「個々のデータ収集元に対して」、収集した情報に基づくアクションを個別に起こしていく流れです。

この例としては、 顧客の購入履歴やWeb上の閲覧履歴をもとに、その顧客の好みに合いそうな商品やサービスを薦める「レコメンド」 運送業のトラックの位置情報や道路の混雑情報から、集荷対象顧客に最も早く着く車を差し向ける などがあります。

ビッグデータは今後も、社会やビジネスにおける様々な価値を生み出していくことでしょう。

その中で技術的に強化され、応用が進むと思われるものをいくつかあげておきます。

よりリアルタイムな情報収集とそれに対する迅速な対応(リアルタイム経営、省エネの制御など) 需要予測の高度化(生産工程の効率化、人的リソース配置の効率化など) さてここまでは、販売データを活用するにあたっての、技術環境や分析方式について述べてきましたが、次はビジネス現場における「分析からアクションまでの過程」を具体的に見ていきましょう。

まずはB2BビジネスとB2Cビジネスの特徴とデータ活用方法の相違点の確認からです。